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AIの活用による労働生産性向上に向けて~次世代設備設計支援システム「SOERU」の社内運用を開始~東京大学大学院工学系研究科松尾豊教授が来社

当社は、国内屈指のAIの開発実績がある東京大学の松尾・岩澤研究室に伴走する株式会社松尾研究所(以下、「松尾研究所」)と、2023年8月から「次世代設備設計支援システム」の共同開発に着手しており、今般、第1弾となるSOERU(ソエル)」の社内リリースに際し、松尾研究所技術顧問である松尾豊教授が来社されました。AI活用を進めていくことで、業務効率化・省力化に留まらない価値を創造するための貴重なお話を伺いました。

PC020024.JPG山本
本日はお忙しい中、弊社にお越しいただきましてありがとうございます。
お付き合いをはじめた頃は、時間外労働の上限規制が適用される一方、旺盛な建設需要により工事量が多く、残業も多く繁忙感がありました。
建設現場の労働生産性向上は、社会的課題でもあることについて認識を共有することができて、松尾研究所とタッグを組ませていただきました。

松尾教授
まずは長期にわたりこのような共同開発の機会をいただき、こちらこそ感謝しています。
建設・設備の現場は高度な判断が求められる一方で、デジタルやAIの導入が進まず、本来の力が発揮しきれていない場面が多い産業でもあります。しかしこれは裏を返せば「民間企業がAIに投資し、新しい価値を生む余地が大きい産業」であるとも言えます。
今回のプロジェクトでは、御社が単なる効率化ではなく、安全・品質や技能継承まで含めて「業界全体を変えていくんだ」という強い意思をお持ちであることが随所で伝わってきました。特に初期から、現場の方々が愚直に情報を提供し、深い議論に時間を惜しまず向き合われていたことは、AI研究者の立場から見ても稀有な姿勢です。
こうした現場の理解と覚悟があったからこそ、データサイエンスの視点と現場の視点を組み合わせながら、「産業の未来を共に創る」取り組みに発展できたと感じています。

山本
松尾先生は、内閣府AI戦略会議の座長や国公的な審議会・委員会の中心的な役割を担われており、民間の多種多様な業界一流企業からも開発の要請を受けていらっしゃいます。大変お忙しい中にあって、当社との共同開発に着手いただきありがとうございます。
建設業界の中でも、私どものような電気設備の施工会社は、長らく熟練技術者の経験や勘に頼る労働集約型の産業として歩んできました。デジタル化の進展は他産業に比べ遅れており、担い手不足が深刻化する中で、AIによる設計支援や省力化への期待は高まっています。

松尾教授
電気設備の施工は、図面には書ききれない文脈的な判断が多く積み重なった高度な仕事だと認識しています。熟練者の経験が重視されるのは当然で、むしろそれだけ専門性の高い産業だということです。その中で、担い手不足が進む昨今、AIを使ってどう価値を生むかを考えることが様々な産業でますます重要になっています。
AI
は人を置き換えるものではなく、経験知を形式知化し、専門性を「底上げ」するための道具です。その意味でも、御社が調査段階から開発段階に至るまで、「現場としてAIとどう付き合うべきか」を地道に議論し続けてこられたことは、本当に印象的でした。こうした姿勢を持つ企業となら、AIを現場に実装し、新たな付加価値を生み出せると強く感じています。

PC020006.JPG山本
開発の第1弾としてリリースされる「見積用設計図作成支援」については、私どもの現場の実情を調査するために約5か月を要し、現場の業務を50工程に分類して、優先的に実施すべき施策を計量的に選定していただきました。確かにそうだと納得する指摘や、こんなことまで問題と捉えるのかと意外なところもありましたが、開発の狙いやAIとの付き合い方が徐々に明確になっていきました。

松尾教授
AI開発の最も難しい部分は技術そのものではなく、「何を課題として解くべきか」を定義することです。そのために今回、約5か月もの間、現場の業務を50工程に分解し、1つひとつを定量的に評価していきました。普段は意識されない非効率や、逆に絶対に守るべき重要工程が明確になっていったのは、まさにデータを使ったファクトファインディングの成果です。
また、調査フェーズだけでなく、開発フェーズにおいても、現場の方々が何度もヒアリングに応じ、膨大な時間を割いて協力してくださいました。これは「AI導入は地道な積み重ねがすべて」という本質を理解されているからこそできることで、御社の本気度を改めて実感しました。
こうした取り組みを通じて整理されたノウハウは、御社にとって大きな資産になるだけでなく、業界全体の競争力を高める重要な知見にもなると考えています。

山本
当初は、労務環境の改革が大きな経営課題であり、長時間勤務が改善されるならば何でもすぐにやろうということでAI活用を考えていましたが、労働生産性の向上に加えて、若手社員や経験の浅い社員の技術的な育成や安全・品質管理の予見にも期待できそうです。

松尾教授
今回の共同開発は、省力化の実現だけでなく、若手育成の仕組みづくりとしても非常に大きな可能性を持っています。AIは熟練者が無意識に行っている判断基準を見える化し、若手が早い段階から正しい判断の型を身につけられるようにします。言わば「経験の学習曲線を短くするための知識インフラ」です。
さらに、安全や品質の領域では、過去のデータからリスクを先読みして提示することも可能です。現場に入った瞬間から、専門家の知見が一緒に伴走してくれるような未来の働き方を実現できると考えています。
御社の社員の皆さんが、松尾研究所の学生・職員と議論を重ねながら、自らAIを使って業務を変えていこうとする姿勢は非常に頼もしく、今後この産業を牽引していく原動力になると期待しています。

山本
松尾研究所の学生さんや若い所員の皆さんと、当社の若手社員の交流は大変貴重で、いくつか新しい付加価値を発見しているようです。特に若手社員は、時代の潮流に乗って生成AIと当社の業務をどう融合していけるか、各自が応用できるようになって欲しいと思っています。
また社内でのAI活用ははじまったばかりです。これからも松尾研究所との共同開発において、AI活用の範囲を拡大させ、業務効率化・省力化を推進するとともに、技術の伝承と安全品質のレベルを高めて、お客様のご信頼に応えていきたいと考えております。

松尾教授
AI活用は、一つのシステムを導入して終わるものではありません。むしろ、組織が「データを活かす力を持つかどうか」が成否を分けます。10年先を見据えると、施工管理・安全品質・調達・人材育成など、あらゆる業務がデジタルと密接に結びついていきます。
その中で御社は、現場を深く理解しながら、AIとどう共存し活用していくべきかを、経営層から若手まで一体となって考え抜き、実装へ踏み出している。この姿勢は、業界全体のモデルケースになりうる非常に重要な価値を持っています。
民間企業が自らAIに投資し、付加価値を生み出す方向へ舵を切ることは、日本の産業競争力の観点から見ても非常に大きな意味があります。今回の取り組みが、電気工事業界全体のアップデートにつながることを心から期待しています。

山本
私はじめ、経営層も時代の変化に感度を高めて、10年先を見据え、当社の技術、業務とAIをどう連携させていくか、走りながら考えていきます。引き続きよろしくお願いします。

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▼次世代設備設計支援システムSOERU(ソエル)」については、下記のお知らせをご覧ください。
東光電気工事、松尾研究所とAI業務支援システム「SOERU」を開発し本格運用を開始 ―AI活用により、施工業務効率化と技術継承の仕組みづくりを推進―